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「藤本繁蔵の鮨」その3 [鮨]

僕が雑誌「オプラ」(講談社)2004年6月号に書いた記事
『藤本繁蔵の鮨』の抜粋を数回に分けて、掲載することにしました。
14年前に書かれた記事ですから、
すでに故人となられた方の証言も含まれていることを
予めお断りしておきます。

photo1748.jpg

ひとつのひとつの鮨に繊細な仕事を施す藤本は、その盛りつけにも徹底してこだわった。
藤本がテーブル客に出す独特の盛り込みは“まわし盛り”と呼ばれた。

我々が目にする盛り込みは、一方を正面として平行に鮨が置かれるのが普通である。
ところが藤本は食べる客が3人なら三方、4人なら四方に放射状に盛り込む。
こうすれば、鮨を自分の方向から食べることができるというわけだ。
「親方は飯台の中を雑然と箸が行き交うのを美しくないと思ったんでしょう」(鈴木民部氏)。
よく見れば、マグロの赤、イカの白、コハダの銀、玉子焼の黄を絶妙な配色で並べていることがわかる。
合理的であってなおかつ美しい。類い稀なセンスを感じさせる仕事だ。

そして、藤本の仕事の集大成と呼ぶべきものが、ちらしずしである。
これは他のどんな鮨職人が作るものとも違う、真に独創的な形状をしていた。
清水喜久男氏は「親方の仕事はどれも最高に美しい。でもその真骨頂はちらしずしです」と断言する。

そこで清水氏に40年前の記憶を再現していただいたのが、この絢爛豪華な“藤本流ちらしずし”である。
これは藤本が深く交流した作家の大佛次郎の注文で手掛けたものだ。

このちらしずし、実に複雑な多層構造をしている。(中略)
シャリの土台に刻んだ干瓢とガリ、もみ海苔をまんべんなく散らし、
周りに玉子焼と煮椎茸、海老おぼろ、煮アナゴを置き、
均一の大きさに切り揃えたマグロの中トロとヅケ、
細かく飾り包丁を入れたヒラメ(またはタイ)、イカ、コハダ、車海老、赤貝を花のように並べ、
彩りとして栗と絹さやをあしらう。
魚の下拵えのみならず、椎茸を煮るのも栗を甘く炊くのもすべて藤本自身がやっていたという。
「親方がこれを作っている時は、声をかけるのも憚られるほど集中してました。
それはもう、怖くて近寄れないくらいにね」
藤本はこのちらしずしを、飯台ではなく大皿に盛りつけ、そのまま大佛の元に届けた。(中略)

他の追随を許さぬ圧倒的な技術、卓抜した美的センス、そして己れの鮨に対する妥協なきこだわり。
そのすべてが、藤本繁蔵が天才と呼ばれる所以なのである。

http://hikari-h.blog.so-net.ne.jp/2018-03-14
( ↑ 続きです)

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